「もしかして建築士の試験を受験される方ですか?」
私が二級建築士の受験をする為に願書を取りにいったということを見透かすように、相手が話しかけてきました。
相手はこざっぱりとしてスーツを身につけていて、落ち着いた感じがしてなおかつ物腰の柔らかい男性でした。
私は基本的に初対面の人を信用する事が出来ないのですが、それでもその男性から怪しげな雰囲気は全く伝わってきません。
そうした相手の雰囲気に負けてしまい、私は思わず返事をしてしまいました。
「そうですけど…」と。
■名前とか住所とか…
私がその時に期待したのは、彼が願書を受け取る場所まで案内してくれることでした。
その為にわざわざ声をかけてくれたのだと思っていたのですが、まあおめでたい考えです。現実はそんなことなどあり得ません。
彼は少し普通に話をした後「二級建築士の受験を希望される方には、こちらの用紙に記入をお願いしています」と言って、名前や住所などの情報を記入する用紙を渡して来ました。
その時普段の私であればピンと来てもう相手にしないのですが、初めての建築士試験ということで少々浮き足立っていたようです。
そんな状態で、思わず自分の名前と住所、そして携帯電話の番号まで正直に書いてしまったんですね。
一連の情報を記入し終えると、彼は「実は私○○資格の○○と申します。この度は建築士試験を受験されると言うことで、スクールのご案内をさせてもらっています」というような主旨の話を始めました。
そこまで聞いた私は初めて「やられた」と思いました。
要するに自分から貴重な時間を割いて、建築士のスクールに自分の個人情報を流してしまったんですね。
スクールの案内など、独学で建築士の試験に挑もうと思っていた私にとっては全然関係のない話でしたから、その場は当然ぴしゃりと断りました。
そうすると相手はスクールの資料と簡単な問題集を私に渡し、ついでに願書を受け取る場所を教えてくれました。
最終的な目的は達成したのですが、まあ余分な時間を取ってしまったと当時は思ったものです。
■どんな情報でも役に立つ
私はそのスクールに対して「微妙に騙された感じ」を一方的に抱いていましたので、もらった資料に対してもあまり良い思いを持っていませんでした。
なので、一度はその資料もすぐに捨ててしまおうかと思ったのですが、結局私は思いとどまり、じっくりと時間をかけてその資料に一通り目を通すことにしました。
せっかく自分の個人情報と引き替えにもらった資料ですから、捨ててしまうのもどうかなと思った訳です。
結論から先に言ってしまうと、その資料は意外に(と言ったら失礼かも知れませんが…)役に立ったんです。
そこに書かれたスクール受講料の高さを再確認することが出来たのがひとつ、また、自分の見えないライバルがどんな環境で勉強をしているのかを知ることが出来たのがもうひとつ。
また、資料を通してそうしたスクールの雰囲気を少しでも味わうことが出来たのも良かったと思っています。
「みんな頑張って勉強をしてるんだ…」と、当時の私はその資料を見て思い、さらに勉強のピッチを上げていきました。
使い方と本人の受け止め方によっては、無料の宣伝的な資料でも役に立つことがあるんですね。
そして、おまけ的に付いてきた小さな問題集もなかなかポイントを突いていて、電車の中で読むのに重宝しました。
独学で勉強をする場合、私はまず基本的な知識を参考書によって仕入れることからスタートします。
そしてある程度参考書によって知識がたまった後は、ひたすら問題を解いていき、間違った部分を徹底的に復習するというやり方をします。
そうすると、段々と間違いの数が減っていき、それに伴い自分の知識も確かなものになっていくことになります。
こうした勉強方法ですから問題の数は多い方が良いんです。そういった意味でもこの問題集はありがたかったです。