すこし前に、縮尺と紙のサイズによって印刷可能範囲が変わる、という話をしました。覚えているでしょうか。

ここで、印刷可能範囲について、ちょっと気をつけなければならない点がありますので、補足をしたいと思います。

まず印刷可能範囲の考え方についてお話ししたときの内容を、以下に引用してみますね。
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例えば1/50の図面の場合、印刷可能な図面の範囲は以下のようになります。
X方向: 841 × 50 = 42050mm
Y方向: 594 × 50 = 29700mm
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この説明は、間違いという訳ではありませんが、完全という訳でもないんです。順を追ってお話ししていますから、いきなり全てをお伝えできる訳ではないことをまずは御了承下さいね。

では、どこが不完全なのか?という点について今回は考えてみたいと思います。

■印刷できない範囲

A1・1/50の印刷範囲は確かに上記の数字になります。そういう意味で、間違いではないという表現をしました。

ただし、印刷する機械(←古くさい表現ですが…)であるプリンターやプロッターは、印刷の機構上、紙の端まで全部印刷できる訳ではありません。

つまり、図面範囲の端の方はプリンターの都合で印刷できない、ということです。前回の説明が完全ではないと言ったのは、この部分を考えていないからです。

この印刷できない範囲をマージンと呼びます。作図する際にはマージンを考慮しないと、後で大変な目に遭うことになります。

作図が終わって、いざ印刷しようという段階で「なんか図面の端が見切れるんですけど…」という悲しい状態にならない為には、最初が肝心です。

また初期設定?と思って身構えてしまった方も心配しないでください。マージンには明確な設定がありませんので、ダイアログボックスが出てきて…というような話ではありません。

ではどうするのかというと、手動で確認します。…個人的にはダイアログボックスが出てきて、そこできっちりと設定をする方が好みなんですが、仕方がありません。

具体的には、先程設定した図面範囲よりも一回り小さい範囲を作図可能範囲として考える、というだけです。

でも、よくよく考えると当たり前の話ではないでしょうか。仮にギリギリまで印刷出来るプリンターやプロッターがあったとしても、作図範囲が本当に紙のサイズと同じなんです。

作図範囲ギリギリまで作図をしたとしても、用紙ギリギリまで線を引くのは至難の業だと思うんです。紙をセットする際に、少しでもずれていたら印刷されない部分が出てしまいます。

これでは厳しすぎます。何事にも余裕が必要、ということではないでしょうか。

■マージンの大きさ

おおよその数字ですが、マージンは上下左右とも10mm~20mm程度です。これはプリンターの機種によって若干変わってきます。

どのプリンターで印刷してもきちんと印刷できるようにする為に、マージンにはゆとりを持った方がいいでしょう。

A1などの大きなサイズが印刷出来るものをプロッターと呼びますが、プロッターのマージンもA3の場合のマージンとあまり変わりません。

ですからA3サイズに縮小しても見切れないような範囲に作図しておけば、A1でも見切れないですね。マージンの大きさが変わらないのであれば、紙のサイズに対するマージンの割合はA3の方が大きいですから。

このあたりの話は、縮尺の考え方を理解出来ていれば問題ないと思いますが、いかがでしょうか。

マージンを考慮した作図範囲の設定は、手動なのでメンドクサイです。…が、なにも全員でその作業をやる必要もないので、ここに一応の目安的な寸法を書いておきます。

上下左右共に14mmあけておけば、大抵のプリンターは大丈夫でしょう。ただし注意して欲しいのは、この14mmという数字は、印刷した紙を計った数字だということです。

では、今作図している1/50の図面ではいくつとすれば良いでしょうか。今までのお話を思い出しながら、自分で考えてみてくださいね。

答えは700です。

どうして700なのかというと、50分の1に縮小して14mmなので、縮小する前は14mmの50倍です。
つまり 14×50=700 という式が成り立ち、マージンを除いた図面範囲は以下の通りとなります。

X方向:42050-(700×2) = 40650
Y方向:29700-(700×2) = 28300

700×2になっているのは、それぞれ上下・左右があるからです。

今回は、この範囲を作図範囲として、作図を進めていきたいと思います。紙に納まりきるかどうかというのは、意外に重要ですので最初に確認をしておきましょう。