さて、では前回の続きから…。

■ハッチングの違い

8人の図面屋さんがいる中で、出来るだけ図面の見映えを合わせようとして色々設定について打合せをしたあと、出来上がった図面を見て私は驚きました。

何人かのハッチングパターンが異常に細かいんです。

いや、細かいというレベルを通り越して真っ黒になっていました。おかげでその部分の寸法などがまったく見えない状態です。

早速彼らの所に行き「決まり通りにやってください!」と言ったのですが、彼らは決まりの通りにやっている、と言い張ります。「本当ですか?」という感じで、半分頭に来ながらとりあえずデータを見てみると…。

彼らの言うとおり、本当に設定通りになっているんです。どうしてか、その理由が当時の私には分かりませんでした。それなりにAutoCAD(オートキャド)の経験は積んでいたのですが、分からない事は結構あるんですね。

彼らは彼らで「何でこんな設定なんだよ…」と思いながら作図を進めたのでしょう。そういった微妙な不満を抱えながらだと、当然作図の効率は良くないです。

とりあえず文句を言いたかった私は(←若いですね)不完全燃焼のまま自分の席に戻ってきました。

そしてしばらく調べた結果、メートル系とインチ系でハッチングパターンが違うことを知ったんです。今考えると簡単な事ですが、当時はそんな設定があることなんて知りませんでした。

当時私が「この設定でやりましょう」と言ったその設定は、見事にインチ系の設定だったんですね。
だからメートル系の設定だった何人かの人は、ハッチングパターンが異常に細かくなってしまったんです。

そこで、もう一度彼らの所に行き、訳を説明して謝りました。当時の私は大人気なかったのですが、まわりの方は大人だったので許してくれました。

絶対に許さない、と言われても困ってしまいますが。

■対処方法に困る

ただ困ったことに、今から(今さら)メートル系の単位に統一したとしても、今まで作図した図面にはインチ系が混在してしまっています。これをどうするか、少し悩みました。

結局はそのままにしてしまい、修正が出てきた段階で徐々にメートル系に移行しよう、という(やや後ろ向きな)話になりました。

建築の図面は修正が入ることが当たり前ですので、修正をかける時に、ついでに直してしまうという作戦(?)です。作戦という程の話ではなく、その場しのぎ的な話ですね。

そして、それからしばらくして、ようやく全てをメートル系に統一することが出来ました。
私個人としては実に勉強になった経験でしたが、仕事の効率だけで考えると非常に無駄の多いやり方でした。

申し訳ありません…と、ここで謝罪しても、彼らは当時から既にAutoCAD(オートキャド)に関して高い技術を持っていましたので、このサイトを読んでいるとは思えませんが。

そして私が何よりも怖いと感じたのが、メートル系とインチ系の違いを知らないだけで、こうした無駄が発生する、ということです。

■恥をかいて覚えること

ここでは割とさらっとお話しましたが、実際はかなりピリピリしたムードになってました。それに、自分の知識のなさを大声で宣伝したようなモノですから、今考えると非常に恥ずかしい話です。

タイトルにも書きましたが「知らない」というのは怖いことです。確信をもって全然違う方向に進んでいくことが出来るのは、知らない人だけですからね。

そしてさらに言うと、人に指示を出す側になった時は「知らない」ということは「怖い」だけではすまない話になります。

下につく人に無駄な時間をとらせることは、上司としてやってはいけないことだからです。

これはリアルな話で、私はこんな感じにたくさんの恥をかきながら、徐々にAutoCAD(オートキャド)のスキルを磨いていきました。

そして今でも時々恥をかいています。失敗というのは、いつまでたっても無くなりませんね。

困ったことです。

でも、このサイトを読んで頂いた方は、少なくともメートル系とインチ系の設定に関して恥をかかないですむはずです。私の失敗を知っていますから。

他人の失敗を自分の経験にする、というのはこういうことです。

なるべく恥をかかないでスキルアップをしていくのが理想なんですよね…。私には無理でしたけど、今から覚える方にはその可能性があります。その為に、少しでもこのサイトが役に立てば良いなと思います。