オートキャド(AutoCAD)を使って仕事を円滑にまわすことが出来るようになった私は、「人に教えながら仕事をする」ということに挑戦しはじめました。

いくら会社に「じゃあこれもやってね」と言われたことでも、新しいことに挑戦するのは基本的に楽しいことだと私は思っています。

その時も、それほど大変なことにはならないだろうという思いもあって、新しい環境を割と楽しんでいました。

オートキャド(AutoCAD)の操作や仕事のやり方を人に教えることが出来るというのは、単純に言えば「それが出来る人」だと評価されたのだという思いもありました。

今まで私がやってきた方向性は、決して間違いではない。そんな答えが出たような気がしたんですね。

■苦労の連続

今までの道のりが間違っていないことを確認することが出来た私は、いつも以上に気合いを入れて仕事に臨みました。

でも、最初の意気込みとは裏腹に、実際の仕事は私の想像とは全然違って上手くいきませんでした。
いかに自分が今まで恵まれた環境で仕事をしてきたのかを、私はようやく思い知ることになったんです。

自分で思ったことをやることと、自分がイメージしていることを人にやってもらうこと。
これらの間には海よりも深い隔たりがあって、そう簡単にその隔たりを埋めることは出来ない。

オートキャド(AutoCAD)未経験の人と一緒に仕事を始めた私は、そうした当たり前の事実にようやく気が付くことになります。

…遅いですよね。

今思うと、上手く仕事がまわらないのは当たり前のことに思えますが、当時の私にはそんなことも分かりませんでした。

オートキャド(AutoCAD)初心者の方に対して、私と同じスキルを期待することは間違いなのに、どうしてもそういう期待をしてしまうんです。

もちろん直接「同じことをしてね」とは言いません。さすがにそれは言わないのですが、でも行動でしっかりと相手にそれを伝えているんです。

それでは上手くいく仕事も絶対に上手くいきません。

初心者であるが故の間違いというのは誰にでもあって、それを積み重ねて少しずつオートキャド(AutoCAD)の経験を積んでいく訳です。私自身がかつてそうだったように…。

でも私は、初心者にありがちな間違いを受け入れることが出来ませんでした。

「なぜそんなことをするのか?」という身も蓋もないようなことを言って、相手の可能性をつみ取るようなことしか出来なかったんですね。

初心者の失敗をきっちりとフォローして、今回はどこが悪くてこうなったのかを相手に教えること。
そしてもちろんきっちりと仕事をこなすこと。

私が求められていたのはそうした仕事だった訳ですが、私が出来たのは仕事をこなすことだけで、人を育てることに関しては完全に失格という感じでした。

「結局自分がやった方が楽…」

そう思っている内は、いくらオートキャド(AutoCAD)のスキルが高くてもまだまだだということに、当時の私は気づくことが出来なかったんですね。

こうして私は、オートキャド(AutoCAD)を他人に教えながらの仕事に苦戦していくことになります。
まあ今となっては懐かしい思いでと言えますが、当時の私にはそんなことを考える余裕なんてありませんでした。